電車の中や病院の待合室、ちょっとしたスキマ時間に、なんとなく手を伸ばしてしまうスマホ。
テレビを見ながらSNSをチェックしてしまう‥スマホが手元にないと落ち着かない‥朝起きにくくなった‥
便利さの裏に潜んでいるスマホの危険性に、うすうす気づいていている方も多いのではないでしょうか?
この記事では、今話題の世界的ベストセラー『スマホ脳』から、スマホの使い過ぎが人間へ与える影響と、スマホ脳にならないために注意すべき点についてご紹介します。
ベストセラー『スマホ脳』について
現代社会を生きる私たちは10分に1回スマホを手に取り、平均1日に4時間以上をスマホに費やしています。
1日にスマホをさわる回数は平均2600回にも及ぶと言います。
そんなデジタル社会へ警鐘を鳴らす一冊『スマホ脳』が、2020年11月にスウェーデンで出版され大反響をよびました。
著者のアンダース・ハンセンさん(Anders Hansen)は世界の医学研究の最前線で研究を重ねてきたスウェーデンの精神科医です。
前作『一流の頭脳』は人口1000万人のスウェーデンで60万部が売れ、その後世界的ベストセラーになっています。
スウェーデン発!世界的なベストセラー
『スマホ脳』アンダース・ハンセン
原作はスウェーデン語で『Skärmhjärnan』。スマホが脳に与える悪影響も警鐘を鳴らしたこの本は、スウェーデンで大反響をよびました。この本は、2021年3月に放送された日本のバラエティ番組『世界一受けたい授業』でも特集されています。ちなみに、2021年4月現在、英語版はまだ販売されていません。
『スマホ脳』を読んだ感想
著者のハンセンさんが、コロナ危機でスマホが外界とのライフラインになった今だからこそ読むべきだと言う『スマホ脳』。
早速 私も読んでみました!
私の興味のあるトピックだったということもありますが、最新の研究結果を基にしたデジタル社会の問題点が分かりやすくまとめられていて、サクッと読み進めることができました。
「寝る前にスマホをみると睡眠の質が落ちる」、「スマホは集中力を妨げる」など、聞いたことはあるけど、なぜそうなるのか詳しいことは分からない‥
この本は、そんなスマホが私たちに及ぼす影響を、分かりやすい言葉で解説してくれます。
スマホを全否定するのではなく、客観的な視点から実際に行われてきた数々の研究結果がまとめられているのがよかったです。
デジタル社会を生きるほとんどの人に心当たりのある内容になっていると思うので、気になる方はぜひ読んでみて欲しいです。
『スマホ脳』の要約
『スマホ脳』は、科学的根拠と生物学的な視点から、私たちが日常でスマホを手放せなくなってしまった原因を分かりやすく解説してくれる一冊。
著者のハンセンさんは、私たちの脳は現代のデジタル技術の進歩についていけていないことを主張しています。
これまで長年もの間、狩猟採集生活を送ってきた人間の脳は、その生活様式に合わせて進化してきたため、急激にデジタル化した今の環境に適応できていないのです。
パソコンやスマホから毎日大量の情報が入ってくる現代‥
でもその情報を処理する私たちの脳は、狩猟と採集をして暮らしていた1万年前から変わっていない‥
私たちを取り巻く環境の変化と、人間の進化のスピードが合っていないことによるズレが、私たちの身体・心に影響を及ぼしているみたい。
人間の心理を利用するテック企業
私たちの脳は「何か起こるかもしれない」という期待が大好きで、ギャンブルのように報酬がもらえるかどうか分からない、結果が不確かな場合の方がドーパミンを大量に発生させます。
インスタグラムなどのSNSは、この人間の心理を巧みに利用し、意図的にユーザーの依存性が高くなるようにアプリを設計しています。
ユーザーが、何か新しい更新がないか、「いいね」がついていないか確かめたいという欲求を掻き立てるようにデザインされているのです。
その結果、私たちは時間のムダだとわかっていても、スマホを手放すことなく、無意識のうちにスマホを取り出してしまいます。
これはアプリ開発者の手によって、私たちの脳内の報酬システムがハッキングされているからなのです。
スマホの使い過ぎが私たちへ与える悪影響
私たちが、精神的な不調から身を守るためには「睡眠」×「運動」×「他者との関わり」の3つが重要です。
著者のハンセンさんは、スマホがもたらす最大の影響は、私たちがこの3つの活動をするための時間をうばってしまうことだと考えているようです。
本の中で紹介されている、スマホの使い過ぎで起こりうる悪影響を次の3つにまとめてみました。
➊ SNSを使うほど孤独になり、人生の満足度が低下
❷ ブルーライトによる睡眠の質低下
➌ マルチタスクによる記憶力や集中力の低下
➊ SNSを使うほど孤独になり、人生の満足度が低下
最新の調査によると、SNSに多くの時間を費やす人ほど、孤独を感じやすく、人生の満足度が低い傾向にあることが分かっています。
また、リアルな人付き合いに時間を使うほど幸福感が高まるのに対し、SNSは時間を費やすほど幸福感が減ってしまうのだとか‥
その理由としては、リアルでの人との交流に時間がなくなるということ以外にも、皆がどれほど幸せかという情報が大量に入ってくることで、自分は社会的に地位が低い人間だと感じてしまうことにもあるようです。
SNSを通してインフルエンサーが投稿する「完璧な容姿や生活」と常に比較できる状態になった現代では、自分に自信を持てなくなり、人生に満足できない10代の子たちが増えていると言います。
中でも、インスタグラムなどで、他人の写真を見るだけで、自分は写真を投稿したり、コメントを残したりしないような「消極的なユーザー」の方が精神面で悪い影響を受けやすいそうです。
SNSを使う時間を制限するだけでも精神状態の改善に効果があるみたい★完全に止めるのはムリでも、まずはSNSの時間を少しでも減らすことから始めてみるのもいいかも‥
❷ ブルーライトによる睡眠の質低下
私たちが夜になると眠くなり朝になると目覚めるのは、睡眠ホルモンの「メラトニン」が脳に働きかけて眠気を引き起こす働きをしているからです。
体内時計は、目に入る光によってを管理されています。
朝になって光が多く入るとメラトニンの分泌が抑制され、夜になって光を感じなくなるとメラトニンが多く分泌され眠気を引き起こすようになっているのです。
寝る前にスマホやパソコンから発せられるブルーライトを浴びると、脳が昼間だと勘違いしてしまい、体内時計の睡眠と覚醒のリズムが乱れてしまいます。
その上に、SNSやゲームなどのアプリから刺激を受け、脳が興奮状態になることで、眠れなくなるだけでなく、眠りが浅いなどの睡眠障害を引き起こしやすくなります。
スマホが寝室にあるだけで睡眠が妨げられてしまうんだって‥スマホは別の部屋に置いて、目覚まし時計で起きるのがおすすめされているよ。
➌ マルチタスクによる記憶力や集中力の低下
人間はマルチタスクが苦手!
現実には、マルチタスクができるのは人口の1~2%にすぎないのだそうです。
複数のことを同時にこなしているつもりでも、実際は集中の対象を切り替えているだけで、脳はタスクからタスクへと集中を切り替えるのにエネルギーと時間を必要とします。
オンライン会議の合間にチェックするメールや、勉強しながらのネットサーフィン、読書の途中でチェックするSNS‥
脳はその都度、集中を切り替えなくてはいけないのです。
更に怖いのが、マルチタスクは作業能率を落とすだけでなく、情報が長期記憶に変わるプロセスを妨げるということです。
私たちの脳は、まず「作業記憶」として受け取った情報を一時保存し、その作業記憶を、睡眠中などに整理して「長期記憶」として定着させます。
日頃からマルチタスクを頻繁にする人は、作業記憶が劣っていて、記憶力と注意力が大幅に損なわれていることが研究でも明らかになっています。
勉強や仕事、何かの作業に集中したいなら、別の部屋に置いておくのがベスト★ サイレントモードにするだけでは効果がないんだって‥
デジタル時代を生きる私たちへのアドバイス
著者のハンセンさんは、現代のデジタル社会から受ける影響を最小限にとどめるたい人へ向けて、本の最後にいくつかのアドバイスを紹介しています。
その中には、
などのアドバイスが含まれています。
特に子供は「スマホを手に取りたい」という欲求を我慢する自制心が未発達なため、マイナスの影響を受けやすいとされています。
そんなスマホの危険性を熟知している世界のテック企業の関係者たちの多くは、自分の子供がスマホなどのデジタル機器をするのを厳しく制限しているのだそうです。
スマホ依存を改善するための具体的な方法が知りたい!という方は、デジタル・ミニマリズムについての記事も参考にしてみてください。
まとめ
この記事では、『スマホ脳』の内容から、スマホの使い過ぎが私たちへ及ぼす影響と、スマホ脳にならないために注意すべきことについて簡単に紹介しました。
スマホの使い過ぎは、私たちに次のような悪影響を及ぼすリスクが高くなります。
コロナ禍の影響もあり、デジタル化が加速している今だからこそ、スマホとの付き合い方を考え直してみる必要があるかもしれません。
まずは、簡単な「スマホ依存度チェック」で、自分がどれくらいスマホに依存しているかを確認するところから始めてみてはいかがでしょうか?