【本の要約】僕らはそれに抵抗できない-依存症ビジネスのつくられかた

デジタル ウェルビーイング

SNSを何度も開く、海外ドラマをイッキ見するなど、「行動」へ依存する人が近年増えています。

この新しい依存症の背後には、依存症になるようにデザインされたテクノロジーの存在があります。

誰もが簡単にハマりうるし、いったんハマると抜け出しにくい‥

この記事では、そんな「依存症ビジネス」がどうやって作られるのかをまとめた本『僕らはそれに抵抗できない』を解説していきます。

この記事を読んでわかること
  • 『僕らはそれに抵抗できない』の要約
  • ユーザーを依存に陥れるテクニックと対策法
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僕らはそれに抵抗できない-依存症ビジネスのつくられかた

『僕らはそれに抵抗できない ―「依存症ビジネス」のつくられかた』は、デジタル社会で依存を生み出す「依存症ビジネス」の仕掛けと、私たち「ユーザーの心理」を両面から読み解いた一冊。

著者のアダム・オルターさんは、行動経済学、マーケティング、判断と意思決定の心理学の専門家でニューヨーク大学で准教授を務めています。

私たちユーザを依存に陥れる6つのテクニックと、依存症に立ち向かうためのヒントがまとめられています。

これまで依存症といえば、タバコ、アルコール、ドラッグなど物質への依存がほとんどでしたが、近年では、スマホを頻繁に覗く、ドラマをイッキ見するなど、行動へ依存する人が増えてきています。

物質依存から、行動依存(行動嗜癖こうどうしへきへの変化。

現代人を蝕むこの新しい依存症の背後には、依存症になるようにデザインされたテクノロジーの存在があるのです。

スマホゲームやSNSなどに依存してしまうのは、必ずしもあなたの意志が弱いという訳ではなく、あなたが依存するように仕掛けられた罠があるからともいえるでしょう。

その罠の特徴を理解した上でテクノロジーを利用することで、依存の罠にハマりにくくなり、最善の判断がしやすくなるかと思います。

ゲーム依存についても詳しくまとめられている一冊なので、子どもとゲームの付き合い方で悩んでいる保護者の方にもおすすめです。

依存症ビジネスがどうやってつくられるのか

『僕らはそれに抵抗できない 「依存症ビジネス」のつくられかた』アダム・オルター

ユーザーを依存に陥れる6つのテクニック

テック企業が、私たちユーザ―が依存するように仕向けるのに使うテクニックが次の6つなのだそうです。

魅力的な目標

不確実性フィードバック

進歩の実感

難易度のエスカレート

クリフハンガー

社会的相互作用

この6つの要素が多く含まれるほど、行動嗜癖こうどうしへきになりやすいといわれています。

➊ 魅力的な目標

テクノロジーの普及で、数値の測定が簡単になったことで、人は数値化した目標に依存しやすくなりました

メールの受信箱を常に空にしておかないと気が済まなくなったり、SNSでフォロワーや「いいね!」の数を追求したりと、ちょっと手を伸ばせば届きそうな魅力的な目標に追い立てられてしまうのです。

スマートウォッチを身につけるようになったことで、1日15000歩という目標を達成しないと気が済まなくなり、運動依存に陥った方の例も本の中で紹介されていました。

「1日15000歩」歩かないと、敗北感を感じてしまうので、どんなに疲れていても数値目標を達成しようと無理強いすることになるのです。

これが数値化の罠で、目標を追いかけると数字が気になってしょうがなくなり、「切りのいい数字」を追求したり、他人との「比較」にもつながったりします。

そして、これが積み重なると、中毒性のある目標追求に拍車がかかり、失敗を招いたり、結果的に悪い影響を受けてしまうことにもなりかねません。

❷ 不確実性フィードバック

勝つときもあれば負けるときもある‥人は結果が不確実のほうが夢中になりやすい生き物です。

特に勝率が7割くらいのときが夢中になりやすいということが実験で明らかになっていて、スロットやパチンコはこれを上手く利用しているのだそうです。

FacebookフェイスブックInstagramインスタグラム など、SNSの「いいね!」は、スロットマシーンと同じようなもの。

「いいね!」の数字は、ちょうどこのスロットマシーンのような数値表示機械になっていて、「いいね!」がもっと欲しいという気持ちを掻き立てて依存を作り出します。

写真を投稿したからといって必ずしも「いいね!」がつくとは限らないですよね。

この予測のできない不確実性が、SNSの中毒性にもつながっているのです。

➌ 進歩の実感

任天堂のファミコン「スーパーマリオ ブラザーズ」が大ヒットした理由は、最初のハードルが低く、プレーしながら段階的に進歩の実感を得ることができることにあるといいます。

段階的に進歩が実感できることで、プレイヤーはゲームに依存しやすくなるのです。

最初はアプリを無料で提供し、アプリ内でより快適に遊ぶためにアイテムなどを「有料」で販売するという「アプリ内課金」も似たような仕組み。

無料で気軽にゲームを始められるようにして、ある程度ゲームにのめり込ませたところで、次のレベルへ進むには課金が必要になるようにデザインされています。

難易度のエスカレート

プレイヤーが上達するにつれて段階的に難易度が上昇する、テトリスと長時間労働の共通点の一つに、「必要なスキル」と「ギリギリ超えられる試練」のバランスがあります。

人は、「簡単すぎる」と「難しすぎる」の間にあるタスクに魅力を感じます

それは、ちょうどいい難易度のゲームや経済的な目標、仕事上での目標、SNSでの目標、運動の目標なども同じです。

スキルにあわせて、徐々に難易度を増していくタスクが目の前にあると、「あと少しで勝てる」、「あと少しで達成できる」と人の心に火をつけるのです。

プレイヤーが飽きずにゲームに釘付けになるように、ゲーム開発者は、徐々に複雑さが増していく、ちょうどいい難易度のゲームをデザインしているのです。

❺ クリフハンガー

NetflixネットフリックスAmazon Primeアマゾンプライム の普及で誕生したドラマのイッキ見という恐ろしい習慣。

ドラマで1話目を見終わると、自動的に次のエピソードが再生されるので、視聴者は、続きのエピソードを「見るかどうか」ではなくて、「見るのを止めるかどうか」を決断しなければならなくなりました。

ドラマでは、盛り上がるシーン、例えば主人公の絶体絶命のシーンなどを、エピソードの終盤にもってくることで、視聴者が続きを見たくなる「クリフハンガー」という手法がよく使われています。

それに、未完結のものが気になるという人間の心理が働き、視聴者が続きのエピソードを「見るのを止める」と決断をするのを難しくさせているのです。

➏ 社会的相互作用

人は社会的な生き物で、社会的繋がり、他の誰かとの関わり「社会的相互作用(Social interactionソーシャル・インタラクション)」を強く求めます。

同じ価値観を持つ集団に所属したいという社会的欲求と、他人に認められたいという承認的欲求が、人を依存へと向かわせるのです。

Instagram インスタグラムTwitter ツイッター など、SNSだけでなく、オンラインゲームの中にも、この人間の本能を上手く利用して、人を依存症にさせやすくしているものがあります。

そんなオンラインゲームに共通しているのが、➊ 没入感、❷ 達成感、➌ 社会的要素 の3つの要素が含まれていることです。

没頭できるゲームであること、何かのミッションを達成すること、そして一緒にプレーする仲間がいるということが、プレイヤーを依存へと向かわせるのです。

新しい依存症に立ち向かうための対策法

最後の章でオルターさんは、行動嗜癖こうどうしへきという新しい依存に立ち向かうための対策法を紹介しています。

早期予防‥悪い習慣を断ち切るのは難しいため、依存症にならないように「予防」することが大切。特に、前頭前野が未発達の子どもたちは大人より依存症になりやすいため、大人がテクノロジーの健全な利用方法を教えてあげる必要があります。

行動アーキテクチャで依存から立ち直る‥意志の力だけで依存症を克服するのはほぼ不可能。環境を作り込み、自らの行動が自然に依存症から離れるようにデザインすることが鍵となります。

ゲーム性を利用した依存症対策テクニック「ゲーミフィケーション」‥依存のメカニズムを逆手にとって、「自分がやるべきこと」など、目的達成のために活用することが可能。

本の中では、さらに掘り下げた内容が書いてあるので、興味がある方はぜひ読んでみてはいかがでしょうか。

まとめ

この記事では、『僕らはそれに抵抗できない』から、デジタル社会で依存を生み出す「依存症ビジネス」の仕掛けについて解説しました。

人の欲求を駆り立てる罠は至る所に潜んでいるけど、それを停止する規制は備わっていないテクノロジーの数々。

どんな人でも状況さえそろえば、依存症になり得る状況下にあります。

その罠の仕組みを理解しておくことで、罠にハマらないように対策したり、手遅れになる前に手を打つこともできるかと思います。

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