2022年ビックマック指数でみる各国の物価|円安で下落する日本の購買力

知的スキル

各国の経済力を測るのに使われている「ビックマック指数」で、日本円が著しるしく低下していることに今注目が集まっています。 

ビッグマック指数って何?

ビックマックの値段からどうやって日本の経済状況が分かるの?

と気になっている方もいるのではないでしょうか?

この記事では、2022年7月に発表されたビッグマック指数を基にして、他通貨と比較して日本円の購買力が今どのような状態なのかを分かりやすく解説します。

この記事を読んでわかること
  • ビッグマック指数の計算方法や問題点
  • 2022年のビッグマック指数ランキング
  • ビッグマック指数からみた日本の円安問題
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ビッグマック指数について

ビッグマック指数(Big Mac index)は、世界的ファストフードチェーン店マクドナルドのビックマックの販売価格を基準にして、異なる通貨の購買力を比較する経済指標です。

世界100カ国以上に店舗を展開しているマクドナルドの定番商品であるビッグマックの販売価格は、それぞれの国の総合的な通貨の購買力を比較するのにふさわしいという考えがもとになっています。

1986年9月にイギリスの経済専門誌「エコノミスト(Economist)」によって考案されて以来、対象となる国のビックマック指数がランキング形式で毎年報告されています。

ビックマック指数の計算方法

ほぼ同じ材料を使って、同じように生産されているビックマックは、たとえ通貨が違っても、同じ価格になるであろうという一物一価の法則を基本にしているのが「ビッグマック指数」です。

例えば、ビッグマックの販売価格が、アメリカで5ドル、日本で300円だとした場合、「5ドル=300円」となり、USドル/日本円のビッグマック指数は「1ドル=60円」が妥当な為替レートになります。

このように、購買力が等しい、物価が釣り合っている状態のことを「購買力平価(Purchasing Power Parity)」といいます。

ですが、もし実際に市場で取引きされている為替レートが「1ドル=80円」だとすれば、アメリカでビックマックを購入するのに日本円で400円支払わなくてはならなくなります。

このビックマック指数から割り出した適正為替レートと実際の為替レートの差から、ある国の通貨がUSドルに対してどれくらい過大評価または過小評価されているかを数値化したのがビックマック指数なのです。

ビックマック指数の問題点

ビックマック指数では、世界中で同一の品質で商品が販売されているというというのを前提に考案されています。

しかし、この前提は現実的ではなく、各国のビッグマックの販売価格は、実際には為替レートだけでなく、あらゆる要素の影響を受けています。

厳密に各国のビッグマックの価格を比較するには、消費税などの経済的要素や、国によって多少異なった品質や量で商品が提供されていることも考慮する必要があるのです。

そのため、ビックマック指数だけで各国の購買力を厳密に比較をするのは難しく、ビックマック指数はあくまで経済状況を表す指数の一つとして参考にするのがいいかと思います。

世界のビッグマック指数ランキング

2022年7月に発表された世界各地のビッグマック指数をランキング形式で表したのが、次のリストです。

各国の通貨がUSドルに対してどれくらい過小・過小評価されているかが数値化(%)されています。

ランキングの上位にある国ほど、その国の通貨が強いとされます。

(通貨)価格
(現地通貨)
価格
(日本円)
過大/過小評価
(%)
1スイス(スイス・フラン)6.5092530.3
2ノルウェー(ノルウェー・クローネ)62.0086421.6
3ウルグアイ(ウルグアイ・ペソ)255.0083918.1
4スウェーデン(スウェーデン・クローナ)57.007718.5
5カナダ(カナダ・ドル)6.777242.0
6アメリカ(USドル)5.157100
7レバノン(レバノン・ポンド)130,000.00700-1.4
8イスラエル(新シェケル)17.00682-4.0
9アラブ首長国連邦(UAEディルハム)18.00676-4.8
10ユーロ圏(ユーロ)4.65657-7.5
11オーストラリア(オーストラリア・ドル)6.70638-10.2
12アルゼンチン(アルゼンチン・ペソ)590.00638-11.3
13サウジアラビア(サウジアラビア・リヤル)17.00630-12.1
14イギリス(イギリス・ポンド)3.69612-13.8
15ニュージーランド(ニュージーランド・ドル)7.10610-14.0
16ブラジル(ブラジル・レアル)22.90586-17.5
17バーレーン(バーレーン・ディナール)1.60585-17.6
18シンガポール(シンガポール・ドル)5.90585-17.7
19クウェート(クウェート・ディナール)1.30583-17.9
20チェコ(チェコ・コルナ)95.00548-22.9
21コスタリカ(コスタリカ・コロン)2,650.00539-24.1
22ニカラグア(コルドバ・オロ)139.00534-24.8
23スリランカ(スリランカ・ルピー)1,340.00513-27.7
24オマーン(オマーン・リアル)1.42508-28.4
25クロアチア(クーナ)27.00508-28.5
26チリ(チリ・ペソ)3,400.00505-28.9
27ホンジュラス(レンピラ)89.00498-29.8
28ポーランド(ズウォティ)16.68495-30.3
29ペルー(ヌエボ・ソル)13.90492-30.7
30カタール(カタール・リヤル)13.00492-30.7
31中国(人民元)24.00490-30.9
32韓国(韓国ウォン)4,600.00483-32.0
33タイ(タイ・バーツ)128.00482-32.1
34コロンビア(コロンビア・ペソ)14,950.00480-32.4
35メキシコ(メキシコ・ペソ)70.00473-33.4
36グアテマラ(ケツァル)26.00464-34.7
37ヨルダン(ヨルダン・ディナール)2.30447-37.1
38パキスタン(パキスタン・ルピー)700.00435-38.7
39モルドバ(モルドバ・レウ)60.00429-39.6
40ベトナム(ドン)69,000.00406-42.8
41日本(円)390390-45.1
42アゼルバイジャン(アゼルバイジャン・マナト)4.70382-46.3
43フィリピン(フィリピン・ペソ)155.00380-46.5
44トルコ(トルコ・リラ)47.00369-48.0
45香港(香港ドル)21.00369-48.1
46ハンガリー(フォリント)1,030.00365-48.6
47台湾(ニュー台湾ドル)75.00346-51.3
48マレーシア(リンギット)10.90338-52.4
49エジプト(エジプト・ポンド)46.00335-52.9
50インド(インド・ルピー)191.00329-53.6
51南アフリカ(南アフリカ・ランド)39.90323-54.5
52インドネシア(インドネシア・ルピア)35,000.00322-54.6
53ルーマニア(新ルーマニア・レウ)11.00315-55.7
引用:世界経済のネタ帳 & Economist(21 July 2022)

2020年7月のランキングに引き続き、ビックマックの価格が最も高かったのはスイスで、6.50CHFとなっています。日本円に換算するとなんと約925円です!

基準通貨となるアメリカ(USドル)は6位で5.15ドル、日本円にして約710円という結果になっています。

つまり、日本のビックマックの価格は390円なので、日本からアメリカへ行き、ビックマックを購入すると「アメリカは物価が高い」と感じることになります。

反対に、アメリカから日本へ来た人がビックマックを買うと「日本は物価が安い」と感じることになります。

低下する日本のビッグマック指数

2022年7月のビッグマック指数ランキングで、日本は53ヶ国中で41位という結果になっています。

これは、日本より上位にランクインしている国の通貨より日本円が安いということになります。

日本のビックマック指数を詳しく見ていきましょう!

まず、アメリカと日本のビックマックの販売価格から妥当な為替レートを計算します。

¥390 ÷ $5.15 = 75.73 円

日本のビッグマックの価格(円) ÷ アメリカのビッグマックの価格(USドル)適正レート

つまり、アメリカと日本でビックマックの販売価格が同じになるための適正な為替レートは「1ドル=75.73 円」ということになります。

しかし、2022年7月21日の為替レートは「1ドル=137.87円」なので、アメリカのマクドナルドで実際にビックマックを買うためには日本円だと710円(137.87円 × $5.15)必要になります。

ビックマックの販売価格から算出したレートと実際の為替レートの差(75.73ドル – 137.87ドル)は 「-62.14ドル」となります。

その差を為替レートで割り出すと、日本円はUSドルに対して45.1%過小評価されているという結果になります。

(75.73ドル – 137.87ドル)÷ 137.87ドル × 100 = -45.07%

(ビックマックの価格による適正レート – 実際の為替レート)÷ 実際の為替レート × 100 = 過大/過小評価(%)

ここで割り出したパーセントは、現実の為替相場が購買力平価からどのくらい乖離しているかを示します。

一般に、パーセントの数値が小さい国の人が数値の大きい国に行けば、物価が高いと感じることになります。

図で表してみるとこんな感じです。

日本のBMIは -45.07% です。これは円相場が妥当水準より、約半分も過小評価されていることを意味します。

日本円が妥当水準より弱くなっていて、購買力が釣り合っていないため、アメリカのビッグマックが割高になってしまっているのです。

2020年7月のランキングで日本は25位(390円)で、日本円はUSドルに対して36.3%過小評価されているという結果だったので、差が大きくなっているのが分かります。

2年前のランキングでは、日本円より安かった中国の人民元も、今回のランキングでは31位(490円)と、日本より高くなっています。

まとめ

この記事では、2022年7月に発表されたビッグマック指標を参考にして、他通貨と比較して日本円の購買力がどのような状態なのかを紹介しました。

ビッグマックという身近な商品を通して、円高や円安といった為替の動向を理解できる「ビックマック指数」。

ビックマック指数だけで厳密に各国の物価状況を比較をするのは難しいですが、日本の経済状態を理解する一つの指数としてビッグマック指数をチェックしてみてはいかがでしょうか。

※ 2022年7月のデータです。最新情報は公式サイトをご確認ください。

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