昔はゲーム専用機でするのが主流だったゲームですが、現代ではゲーム専用機がなくても、スマホやタブレットなどから気軽にゲームを始めることができるようになりました。
その気軽さゆえに、最近では、長時間ゲームに没頭してしまう子どもも少なくありません。
この記事では、ゲーム依存症と子どもの脳の関係や、ゲーム依存症になりやすい人の特徴などをご紹介します。
低年齢化が進むゲーム依存症
オンラインゲームなどのやり過ぎで、日常生活に深刻な影響が出る『ゲーム依存症(ゲーム障害)』。
世界保健機関(WHO)により、2019年に、この症状は正式に新たな国際疾病分類として認定されています。
WHOでは、ゲーム障害を次のように定義しています。
➊ ゲームをする時間や頻度などのコントロールができない
❷ 他の生活上の関心事や日常の活動よりゲームを優先する
➌ ゲームによって個人、家庭、社会、教育、職業など重要などに問題が起きていてもゲームを続ける
こうした症状が12ヶ月以上続く場合、ゲーム障害と診断される可能性がある。症状が重い場合は12カ月未満でも診断される。
ゲーム依存症に陥ると、ゲームに費やす時間が長くなることで、食事や睡眠がおろそかになったり、他の活動に対する興味を失うなど、健康や社会生活に支障が生じてしまうなどの状況になります。
これまでは、10~20代の子どもや若者に多いとされてきたゲーム障害ですが、近年ではその低年齢化が進んでいる可能性が指摘されています。
2021年11月に、横浜市立学校に通う小学4年~中学3年の計4164人を対象に実施した調査では、オンラインゲームを経験した生徒のうち12%にゲーム依存傾向がみられ、最も割合が高かったのは小4男子の23%ということが分かったそうです。
この背景には、スマホの手軽さや、依存するようにデザインされたネットゲームの存在があります。
特に、脳が発達段階にある子どもたちは大人より依存症になりやすい傾向にあるので、周りの大人がその健全な利用方法を教えてあげる必要があります。
依存症を引き起こしやすい子供の脳
人間の脳には、理性をつかさどる『前頭前野』と、欲望をつかさどる『大脳辺縁系』があります。
通常は大脳辺縁系よりも前頭前野の働きが優勢なため、私たちは理性的な判断をすることができます。
例えば、美味しそうなケーキを目の前にしても、私たちは『夕飯前だから』、『ダイエット中だから』など、食べたい衝動を我慢することができます。
この食べたい衝動にブレーキをかけているのが前頭前野なのです。
しかし、依存状態になった脳では、前頭前野の機能が低下し、大脳辺縁系の働きの方が強くなることで、感情や欲望をコントロールしにくくなると考えられています。
前頭前野は、記憶や感情をコントロールし、生活していく上で大事な人間らしい思考や理性的な判断を育む役割ももっています。
そんな前頭前野の機能が低下してしまうことで、感情や欲望をコントロールする力が弱まってしまい、ゲームをする時間を制限するのが難しくなってしまうということなのです。
前頭前野は成熟が遅い脳の部位で、子どもの前頭前野は未発達のため、大人よりも依存状態に陥りやすいといわれています。
依存症になりやすい人の特徴
メンタリストDaiGoさんのYouTube動画『ゲーム好きとゲーム依存症の違いとは?』で紹介されていた研究によると、実際に依存症のレベルでゲームにハマりすぎて、元の生活に戻って来れなくなってしまう確率は10%ほどなのだとか。
ゲーム依存症と診断された人たちには、うつ症状や攻撃性の上昇、内向的傾向の増加や不安の増加などの症状が出ていたようです。
ゲームに依存して引きこもってしまう人がいるのは、内向性が増加した結果であるというのもうなずけます。
9割の人たちは、ゲームにハマってしまっても、それよりも大事なことができたり、自分の夢が見つかったり、もっと面白いものを見つけた場合などには、ゲームをやりすぎている状況から戻ってくることができるということになります。
調査の結果によると、ゲーム依存症になりやすい人には次の2つの特徴があったようです。
ゲーム依存になりやすい人の特徴
➊ 男性であること。
❷ 向社会的行動(相手のことを思いやる行動)が少ないこと。
つまり、他人に対して不親切な男性ほどゲーム依存になりやすかったということになります。
また、意外にも経済的に安定している人がゲーム依存症になるケースも多いようです。
ちなみに、DaiGoさんがこの動画の参考文献として紹介していた『僕らはそれに抵抗できない 「依存症ビジネス」のつくられかた』は、ゲーム依存についても詳しくまとめられているおすすめの一冊です。
この本の要約は、別の記事『【本の要約】僕らはそれに抵抗できない-依存症ビジネスのつくられかた』にまとめてありますので、興味のある方は参考にどうぞ。
依存症ビジネスがどうやってつくられるのか
『僕らはそれに抵抗できない 「依存症ビジネス」のつくられかた』アダム・オルター
まとめ
この記事では、ゲーム依存症と脳の関係、ゲーム依存症になりやすい人の特徴などを紹介しました。
子どもは大人よりも依存状態に陥りやすいということを理解した上で、ゲームそのものを全否定するのではなく、子どもと一緒にゲーム利用に関する現実的なルールなどを決めていくことが大切だと思います。