ロシアのウクライナ侵攻でサイバー戦も激化|ハッカー集団アノニマスも参戦

セキュリティ

世界を憤慨させているロシアのウクライナへの軍事侵攻。

軍事侵攻に続き、SNSを通しての宣伝活動や偽情報の拡散、政府や関連企業を狙ったサイバー攻撃など、現実世界だけでなく、サイバー空間での紛争も激化しているのをご存知ですか?

国際ハッカー集団『Anonymousアノニマス』がロシア政府に対してサイバー攻撃を行うことを宣言したことも今大きな話題となっています。

ロシアのウクライナ侵攻の裏でどんなサイバー戦が行われているの

ロシア政府に宣戦布告したアノニマスって何者?

と疑問に思っている方へ。

この記事では、ロシアの軍事侵攻の裏で繰り広げられているサイバー戦や、それに参戦することを表明している国際ハッカー集団についてご紹介します。

この記事を読んでわかること
  • ロシアのウクライナ侵攻の裏で激化しているサイバー攻撃
  • ロシア政府に攻撃をしかけるハッカー集団『Anonymousアノニマス
  • ロシア政府支援を表明するサイバー犯罪集団
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ロシアのウクライナ侵攻の裏でサイバー戦が激化

ウクライナに対するロシアの軍事侵攻の裏で、サイバー空間での戦いも激化。国際ハッカー集団の参戦、SNSを通しての宣伝活動や偽情報の拡散、政府組織や企業のサーバー停止など、さまざまな混乱が生じています。

今回のロシアの侵攻は、物理的な軍事戦闘に加えて、サイバー攻撃や偽情報の流布などを含む複数の手段を組み合わせて実行されていることから、『ハイブリッド戦争(英: hybrid warfare)』という言葉もよく使われています。

軍事侵攻前のサイバー攻撃

ロシアによる軍事侵攻が始まる数週間前から、サイバー空間ではウクライナに対する攻撃が始まっており、侵入後の3日間で、ウクライナの政府や軍を標的としたサイバー攻撃は196%増加したとされています。

2022年1月には、ウクライナ政府や企業などの複数機関で、Webサイト内のコンテンツ改ざんや、DDoSディードス攻撃によるシステム停止などの被害が発生。

2022年2月23日、ロシア軍の戦車がウクライナに侵入し始める数時間前には、ウクライナのデジタルインフラに対して、新しいマルウェア『FoxBladeフォックスブレード』を使用したサイバー攻撃が行われていたことも明らかになっています。

一連のウクライナを狙ったサイバー攻撃には、ロシアの関与が疑われています。

ウクライナ政府は、ロシアのハッカーから自国を守り、ロシアの政府機関や企業にサイバー攻撃を仕掛けるために、ハッカーの協力を得て『IT軍』を創設することを発表。ウクライナ国内外のデジタル人材に参加を呼びかけています。

SNSを利用したフェイクニュースの拡散

Metaメタ(旧:Facebookフェイスブック)は、2022年2月27日、ハッカーによるウクライナ軍関係者や著名人のアカウント乗っ取りがあったことを公表しています。

この乗っ取りは、ハッカー集団『Ghostwriterゴーストライター』によるもので、乗っ取ったSNSアカウントに、ロシア軍に投降するウクライナ兵の偽動画を投稿し、偽情報を拡散することを目的としていたことが明らかになっています。

さらに、この集団は、独立した報道機関を装った複数の親ロシア派のサイトを運営し、偽SNSアカウントを使って、FacebookフェイスブックInstagramインスタグラムTwitterツイッターなどに偽情報を拡散していたとも言われています。

これに対し、米IT各社は、ウクライナを侵攻したロシアの『情報戦』への対策を強化し、ロシアによる世論誘導を狙った、偽情報の拡散防止や広告連載の禁止を行っています。

  • Metaメタ:欧州域内で、ロシア政府系メディアへのアクセスを制限
  • YouTubeユーチューブ:ロシア国営メディアの広告出稿を禁止し、収益化を阻止
  • Googleグーグル:地図アプリ『Google Maps』で、ウクライナ国内のライブ道路交通情報や店舗などの混雑情報の提供を一時停止
  • Twitterツイッター:ウクライナとロシアで広告出稿を中止、偽情報投稿の削除を強化
  • TikTokティックトック:欧州域内で、ロシア国営メディアなどによるサービス利用を禁止
  • Appleアップル:ロシアを除く全世界でロシア政府系メディアのアプリを配信サービスから排除

ロシア政府に宣戦布告したハッカー集団『アノニマス』

2022年2月24日には、匿名で活動する国際ハッカー集団『Anonymousアノニマス』がロシア政府を標的にサイバー攻撃を行うとする声明をTwitter上で発表したことも、大きな話題となっています。

ちなみに『Anonymousアノニマス』とは、『匿名の』という意味で、ネット掲示板などにおいてコメントや画像を投稿する際、投稿者の名前を伏せる目的で使用されてきました。日本の2ch系掲示板などで使われている『名無しさん』と同じようなものです。

ハッカー集団『Anonymousアノニマス』が誕生したのは、英語圏の匿名掲示板『4chan』がきっかけだといわれています。

元々『情報の自由』という大義を共有した抗議集団で、その活動目的は、金銭ではなく、信条をもとにしているのが特徴です。

政治目的のためにハッキングを行う多数の個人が集った『Anonymousアノニマス』というこのグループには、特定のメンバーや中心となる指揮系統があるわけではありません

そのため、誰もが『Anonymousアノニマス』の一員だと名乗ることができ、活動ごとにメンバーが入れ替わります。

そんな Anonymousアノニマス は、今回、ロシアがウクライナに対する軍事侵攻を実施したことに抗議。

『わたしたちは、ロシア軍が祖国を守ろうとする罪のない人々を殺し、殺害するのを黙って見ていることはできない。』

『狂人の妄想の気まぐれで侵略していいことに値する国はない。 いかなる人も、真実を語ることができない検閲の下で生きるべきではない。政治活動家として、私たちは常に虐げられた人々のために戦う。』

などのツイートを投稿しています。

団体の公式 Twitterツイッター アカウントはありませんが、複数の Anonymousアノニマス を名乗るアカウントから、次のような投稿がされています。

  • ロシア外務省や国防省など複数の政府機関サイト停止―Anonymous @YourAnonOne 2022年2月24日)
  • 政府寄りのロシアメディア『RT』のサイト停止―Anonymous @YourAnonOne 2022年2月24日)
  • 複数のロシアの国営テレビ局を乗っ取り、ウクライナの愛国的な歌やロシアの軍事侵攻の映像を放送―Anonymous TV 🇺🇦 @YourAnonTV 2022年2月26日)
  • ロシアに武器を提供するベラルーシの武器メーカー『Tetraedr』からメール等200GBに及ぶデータを盗み出す―Anonymous @YourAnonNews 2022年2月26日)
  • ロシア軍の機密文書をリーク―Anonymous @YourAnonNews 2022年3月2日)

このことからも、ロシア政府に対してのサイバー攻撃の数々に Anonymousアノニマス が関連している可能性が高いとされています。

ロシアを支持するハッカー集団『コンティ』

その一方で、ロシアを支持するハッカー集団も登場しているようです。

2022年2月25日、 国際的に活動する匿名のランサムウェア攻撃者集団『Contiコンティ』は、ロシア政府への全面支援を宣言したとされています。

Contiコンティは、ロシアを拠点に活動するグループで、主に欧米企業に対してランサムウェア攻撃を行ってきた集団として知られています。

ロシア情報機関との繋がりも指摘されているContiコンティは、もし欧米諸国がロシアの重要インフラを標的として攻撃してきた場合、全力で反撃すると警告。

しかし、Contiコンティがロシア政府に味方することに反発したウクライナ人のメンバーもいたようで、その内の一人が、2月28日、Contiコンティが以前行ったランサムウェア攻撃に関する内部メッセージを欧米のサイバーセキュリティ専門家たちにリークしています。

世界でも最も攻撃的かつ高度なサイバー攻撃能力を持つ国として知られるロシア。

Contiコンティ 以外にも、ロシア政府支援を表明しているロシアのサイバー犯罪集団もいくつかいるようです。

ロシアやロシアを支援するハッカー集団が、日本を含め、ウクライナを支援する国に対して、今後サイバー攻撃を仕掛けてくる可能性もあるのでは?という声もあがっています。

まとめ

この記事では、ロシアの軍事侵攻の裏で激化しているサイバー空間での戦い、それに参戦国際ハッカー集団について紹介しました。

SNSを通しての宣伝活動や偽情報の拡散、政府組織や関連企業を狙ったサイバー攻撃など、サイバー空間での紛争は、しばらく続く可能性が高いと予測されています。

在日ウクライナ大使館は、ウクライナへの寄付金を送金できる三菱UFJ銀行口座の詳細を公式Twitterアカウントで公表しています。

Anonymousアノニマスという団体についてもっと詳しく知りたい方は、中田敦彦のYouTube大学に投稿されている動画『【アノニマス①】国際的ハッカー集団がロシアに宣戦布告!』もおすすめです。

参考サイト

The Cybersecurity Risks of an Escalating Russia-Ukraine Conflict(Harvard Business Review):https://hbr.org/2022/02/the-cybersecurity-risks-of-an-escalating-russia-ukraine-conflict

Russia’s cyber warfare is a problem for ‘everyone,’ experts warn(Global News):https://globalnews.ca/news/8650575/russia-ukraine-canada-cyberattack-cyberspace-cybersecurity/

Facebook, YouTube and Twitter remove disinformation targeting Ukraine(NPR):https://www.npr.org/2022/02/28/1083401220/facebook-uncovers-disinformation-and-hacking-campaigns-targeting-ukraine

Cyber Attack Trends In The Midst Of Warfare(CheckPoint):https://blog.checkpoint.com/2022/02/27/196-increase-in-cyber-attacks-on-ukraines-government-and-military-sector/

Conti ransomware’s internal chats leaked after siding with Russia(BleepingComputer):https://www.bleepingcomputer.com/news/security/conti-ransomwares-internal-chats-leaked-after-siding-with-russia/

ロシア侵攻の裏で激化するサイバー戦争事情、トヨタ全工場停止・仮想通貨にも影響…(DIAMOND online):https://diamond.jp/articles/-/297808

デジタルテクノロジとウクライナでの戦争について(Microsoft):https://news.microsoft.com/ja-jp/2022/03/02/220302-ukraine-russia-digital-war-cyberattacks/

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